トヨタの4WDシステムを調べ終わったところで1ヶ月もブランクが空いてしまった。気づくと札幌はもう雪の季節を終え、夏タイヤへの履き替えタイミングを指折り数えている。この冬、FF+DSCのプレマシーで札幌の冬を過ごしたのだが、FF+DSCという選択肢についていろいろと感じるところがあった。
DSCについては、札幌のような日常的に路面凍結や積雪のある地域ではとても有効な装備である。その有効性は緊急時の危険回避や低ミュー路面でのドライバーの負担を減らすだけではなく、DSC作動のインジゲーター点灯による危険領域の視覚化は、危険運転への大きな抑止効果があると思う。数ヶ月におよぶ雪道運転の中で、スタッドレスタイヤのグリップ力や運転を過信しはじめる時期にオーバースピードによる姿勢の乱れでヒヤッとすることが多いのだが、DSCは常に一定の条件で作動するため、この過信を改めさせてくれる。寒冷地域では安全のための有効な装備だと言えるだろう。
ではFFとの組み合わせ、あるいはプレマシーそのものとしてはどうか? やはりDSCを装着していても、FFの雪道性能であることには変わりない。上り坂での発進には不安が残るし、深雪へ踏み込むときはかなりの覚悟が必要だ。FFということに加えて、プレマシーそのものの最低地上高も雪道での走破性能にマイナス要素をたくさん感じた。除雪が追いついていない道路では、サイドスポイラーあたりから雪をこすっている音が聞こえるし、建物との出入りのギャップを乗り越えるときには注意が必要だ。前期型の4WDと横に並ぶ機会があったのだが、4WDモデルの方があきらかに車高が高かった。カタログ上の最低地上高は5mmしか違いはないのだが、車高は35mmも違う。つまりは4WDモデルのほうがロードクリアランスに余裕があるのだろう。ここはFFのプレマシーを選択したことによる雪道性能のマイナス要素だったかも知れない。
しかし5速ATの恩恵は峠の下り坂でなによりもの安心感があった。雪道走行の基本はエンジンブレーキと言っても過言ではないと思うが、ATのギアが4段から5段になることでシフトダウン時の挙動変化も抑えられ、勾配と車速にマッチングしたギアが選びやすい。中山峠の下りでは3速が非常に良いあんばいなのだ。
より安全に、より快適に札幌での冬道運転を過ごすには、どんなクルマが理想だろうか? 安全にという面ではDSCがそのほとんどを担い、プラスαとして私としてはギアの多段化を加えたい。フォルクスワーゲンのDSGのようにクラッチ式であれば、さらにダイレクトなエンジンブレーキが得られ、文句なしだろう。では快適にするには? それはロードクリアランスかも知れないとこの冬の経験で痛感した。オフロード車のFFモデルは無意味だと思っていたが、雪道の快適さという意味ではバカにできない気がしてきた。4WDシステムがスタインバイ式かセンターデフ式かの違いよりも、まずはロードクリアランスという思いが先にたつ。どんなに素晴らしい4WDシステムを備えていても、カメさん状態になってしまってはどうにもならないからだ。そう考えると昨今のクロスオーバーSUVというのは、雪の降らない都会ではコジャレタひとつのカテゴリーに過ぎないが、寒冷地ではオンとオフを両立させる、実用的なスタイルなのかも知れない。
トヨタの4WD、i-Four。クラウン アスリート、クラウン ロイヤルサルーン、マーク Xなどに採用されている電子制御フルタイム4WD。通常はセンターデフを介して前後トルクを30:70に配分し、FRの操舵感と旋回性能を実現。発進や加速時、滑りやすい路面ではコンピューターが電子制御式湿式多板クラッチを制御して前後輪のトルクを最適に配分する。
トヨタの4WD、E-Four。エスティマハイブリッド、ハリアー ハイブリッドなどに採用されている。リアモーターにより後輪を駆動する電気式の4WD。発進時や低速走行時、全開加速時、雪道などの滑りやすい路面で前輪のスリップを検知したときにリアモーターを動かし、4WDとなる。